就業規則は「従業員への公開(周知)」が原則ですが、社長の机の中等に保管(つまり、誰も見ることができない)してある会社や、ご丁寧にも金庫の中にしまってある実例もありました。
実は、公開していない会社でもっと深刻なケースがあります。それは、社長が「就業規則を公開すると従業員が自分の権利を主張する様になり、会社が成り立たなくなる」と考えている場合です。しかし、就業規則を公開して従業員が日常的に権利を主張してくるとしたら、それは年次有給休暇の申請くらいのレベルではないでしょうか?
机の中から「就業規則」を引っ張り出し、下記の一例と見比べて下さい。いかがですか?
<就業規則> すぐに発見できる「リスク」と見直しのポイント
(注)以下のリスク管理は、最低限必要と思われます。 |
リスク① 採用選考時に「運転記録証明書」の提出を義務付けていますか? |
リスク② マイカー通勤は許可制ですか? 任意保険の加入を義務付けていますか? |
リスク③ 休職期間が1年を超える規定になっていませんか? 診断書の費用負担は? |
リスク④ 退職後の秘密保持・競業避止、副業・兼業の禁止に関する規定はありますか? |
リスク⑤ 課長又は係長職以上を「管理監督者」とする規定になっていませんか? |
リスク⑥ 服装や髪形(金髪・ヒゲ等)、ピアス等に関する服務規定はありますか? |
リスク⑦ 始業時刻・終業時刻の意味を「明らかにする」規定になっていますか? |
リスク⑧ 昇給に関し、減給の可能性もある旨を記載していますか? |
リスク⑨ 解雇や懲戒処分について、手続を含めた実務的な規定になっていますか? |
リスク⑩ 残業を「許可制」とし、厳格に管理していますか? |
※ リスク③に付き、労働基準監督署等で入手できる「モデル就業規則」には必ず記載されていま
すが、この「休職規定」は労基法により義務付けられた制度ではありません。法律(労基法)
により定められた制度だと思い込み、長期に渡り従業員を雇用し続ける義務は、会社にはあり
ません。但し、既に制度として規定されている場合の改定行為は「労働条件の不利益変更」と
して不法行為と見なされます。
上記の「休職規定」などは一例にすぎませんが、安易に「ひな型」就業規則を利用すると、法律に定められた制度であると誤解し、実は会社が損をしている場合が多いのです。
就業規則「見直しのツボ」をヒントに「自社の就業規則」を見直すだけでも、会社のムダな出費を抑えられ、無用な労使トラブルに巻き込まれる可能性もグンと減ることは間違いありません。
→ 労働基準監督署への「駆け込み」の大半は、就業規則の不備/不周知が原因です。
最も重要なポイントは「法律で定められていない部分」をどの様に取り決めるかということです。
なぜなら、「法律で決まっているところ」は法律に従わざるを得ないが、「法律で決まっていない部分」は、当事者間(実際は会社側)で決めることができるからです。