< 個別労働紛争「あっせん」>

 

ある日突然「見たことがない文書」が社長に送付されてきました。開封したところ紛争調整委員会からの「あっせん出席の諾否」を確認するもので、案内文書の他に反論書、及び代理人/補佐人の申請書等が同封されています。その中の「あっせん申請書(写し)」は、退職した従業員が自身で作成し、新潟労働局/雇用環境均等室(旧企画室/平成28年4月1日~)に提出したもので、本人は自主退職をしたにも拘らず「解雇されたので、精神的損害・経済的損害に対する補償金の支払を求める」との主張内容になっています。

 

< 送付された「文書(あっせん)」とは何なのか? >

当該文書は「個別労働紛争の解決に関する法律(労使トラブルに関する法律です)」に基づいて、退職者が「あっせん申請書」を労働局に提出したことによるものです。あっせん制度は「国による紛争解決制度」であり、司法による裁判とは大きく異なっています。民事訴訟による紛争解決と、ADR(当該「あっせん」などの「話し合い」による紛争解決制度)とは、ある意味での共通点はありますが、以下の様な差異が特徴的です。

 

訴訟には「民事訴訟・刑事訴訟・行政訴訟」等の区別がありますが、最も一般的なのは民事訴訟であり、私人間(個人、団体/企業vs従業員など)の民事に関わる訴訟となります。

これは権利義務の有無を司法(裁判所)が判断して確定することにより「紛争を解決する手段」として機能することになる為、裁判に於いて正当性を主張・立証しなければ、自己の「非」を自ら認める結果にも成りかねません。

 

これに対し「個別労働紛争」は、労働者個人と使用者の間の労働条件・就業環境などをめぐる紛争であり、解雇/いじめ・嫌がらせ/パワハラ/賃金引下げ/配置転換・転勤/懲戒処分/雇止め/人事評価/損害賠償などが紛争の代表例となります。当該「問題」について第三者(後述)を介して話し合い、当事者間の歩み寄り(具体的には、労働者の要望する補償金などについて当事者間の調整を行います)を求めることになりますが、基本的には「あっせん」の参加・不参加は事業主の

自由であり、あっせん委員の提案(あっせん案)に対して納得できなければ、あっせんの場で拒否することが可能です。 → この時点で「あっせん」は打切りとなります。

 

前述の「あっせん出席の諾否(回答書)」に関しては、都道府県労働局が「個別労働紛争の解決に関する法律」に基づき、紛争調整委員会を介して事業主宛に郵送したものになりますが、案内文書を確認すると「国による任意の制度」であり、会社側には「あっせんに参加しない自由」が保障されていることが分かります。尚、参加する場合であっても、当事者による立証責任(証拠の提示・提出など)を課すことはありません。

 

  

 

 

   

 湊元社会保険労務士事務所

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