< 解雇が有効となる為の、主たる「要件」とは >

 

(1)就業規則に「解雇事由」が規定されていること

就業規則の「退職に関する事項」は絶対的必要記載事項ですが、その中には「解雇の事由に関する事項」が含まれています。従って、就業規則には「解雇に該当する具体的な事由(理由)」が明確に規定されている必要がありますが、規定した「解雇事由」以外の理由では絶対解雇できないとの

法的効果を有すると迄は言えません。尚、懲戒処分については「懲戒の種類・程度」が就業規則に規定されていることが前提要件となります。

 (2)30日前に「予告」するか、「解雇予告手当」を支払うこと

 

労基法20条は「使用者は、労働者を解雇しようとする場合に於いて、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」としています。但し「天災事変その他やむを得ない事由の為に、事業の継続が不可能になった場合」又は「労働者の責に帰すべき事由により解雇する場合」については除外されますが、事前に所轄労働基準監督署長の「除外認定」を受けることが必要となります。

 

(注)解雇の効力が生ずるのは「解雇通告後30日を経過」するか「解雇予告手当を支払うか」の

   いずれか早い時期とされています。

 

(注)上記「解雇予告/解雇予告手当」については、以下の「除外者」が存在します。

   ① 日々雇用される者(1ヶ月を超えた場合を除く)

   ② 2ヶ月以内の期間雇用者(この期間を超え、継続雇用された者を除く)

   ③ 季節的業務で4ヶ月以内の期間雇用者(この期間を超え、継続雇用された者を除く)

   ④ 試用期間中の者(14日を超えた場合を除く)

 

(3)解雇に「相当な理由」があること

 

前述した様に、現在では労働契約法16条により「客観的に合理的な理由があること」及び「社会通念上相当と認められること」が解雇の正当性を肯定する判断基準になりますが、契16条だけで無く「信義誠実の原則(民法第1条2項)」・「公序良俗(民法第90条)」などを適用した上で個別に判断されることになります。

尚、労働契約法(民事法です)自体に罰則は有りませんが、判例の積み重ねにより確立された解雇権濫用法理(最高裁判決で確立)がそのまま立法化されたものなので、同法に違反する行為については(裁判になった場合には)不当行為・違法行為として処罰/慰謝料請求の対象とされます。

 

(4)法律上の「解雇禁止」に該当しないこと

 

解雇は、民法(627条/但し、特別法である労働基準法が優先)に定める通り、原則的に使用者の自由ですが、法律(労基法・安衛法・均等法・育介法・労組法など)で解雇が禁止・制限される場合があります。

 

1.業務上の負傷・疾病による休業期間/産前産後の休業中、及びその後の30日間の解雇

2.国籍、信条、性別等を理由とする解雇

3.監督機関等に対する申告・申出を理由とする解雇

4.婚姻・妊娠・出産・産休・育児/介護を理由とした解雇

5.不当労働行為となる解雇 など

 

以上、代表的な「解雇が有効となる為の要件」を紹介しましたが、一般的には「就業規則に規定」があり「30日以上前に解雇通告」を行い、「解雇するに足りる相当の理由」が存在し、「法的な解雇禁止事項」に該当していない・・・ので「解雇は正当であり、問題は無い」との判断をすると

思われます。

 

確かに(3)以外は労基法(他の諸法令を含む)に則した対応であり、労働法令上(他の諸法令を含む)の違法行為は発生していないことになります。しかし(3)に関しては、民事訴訟・個別労働紛争に発展する可能性が大きく、労使トラブルの中心となっています。→「不当解雇」との主張

 

  

 

 

   

 湊元社会保険労務士事務所

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