< 監督署が介入できる限度 >

 

そもそも、労働基準法等は(弱者/弱い立場の)労働者を守る為の法律であり、労働基準監督署は

経営者に対する権利救済や、就業環境・労働条件の改善(情報提供を含む)を求める労働者が申告に訪れています。しかし、現実の問題として多くの労働者の「訴え」に対し、全ての企業の調査をするほど多くの監督官が監督署に配置されているわけではありません。

 

持ち込まれた案件(申告)については、労基法に違反している「疑い」がある場合のみ企業を訪問して立入調査(臨検監督)を実施することになります。つまり、労働基準監督官の「権限」はあくまで「労働基準法違反の疑い」があるケースに限られていることが分かります。従って「一方的に配置転換された」という訴えは監督署では対応できません(民事不介入/企業の人事には介入できないので)し、「解雇理由に納得がいかない、不当解雇である」との訴えにも応ずることはできません(解雇理由の可否は、司法に於いて判断されるべき内容なので)。

 

では、会社が従業員全員の「賃金カット」を行った場合はどうでしょう?

 

通常、賃金カットをする場合は「事前の事情/経緯説明」を経て、従業員の「同意書」を取り付け

その後に「就業規則」を改定して所轄監督署に届け出ることが一般的です。その場合に賃金カットに同意をしていない従業員が監督署に「訴え」た場合であっても、当該就業規則の改定に合理性が

あり、正しい手順を踏んで「周知」されたものであれば、監督署は就業規則の「改定届」を受理するだけであり、個別企業には介入できません。(合意をしていない従業員も、改定後の就業規則に

拘束されることになります)

 

但し、一方的に会社側が「賃金カット」を実施し、従業員達が「給与明細書を見て、初めてカットされたことを知った」との状況であれば話は別です。当該ケースに於いては「労働者の合意も無く強制的に賃金を減額した」ことになりますので、前述の「賃金全額払いの原則」に抵触する違法な

行為となりますので、従業員より「訴え」があれば、監督署は事実確認をした上で「差額分の賃金支払」を命ずる「是正勧告」を事業主に対して行うことになります。従って、賃金カットは認められず、翌月以降は通常の賃金(従前の賃金)を支払う義務が発生します。

  

 

 

   

 湊元社会保険労務士事務所

   代表 湊 元 雅 博

      ( tsumoto  masahiro )

   〒950-0855

   新潟市東区江南1-4-10

   TEL 025-286-1376

   FAX 025-286-1376

 携 帯 090-4679-2268