Q1.パワハラと「部下への指導」の境界線は?
叱られることに慣れておらず、ちょっとした「注意」を受けても傷付く若年者が増えています。
上司の側にも「嫌われて、トラブルになるのも面倒」との理由から「叱る」という行為を敬遠する風潮もありますが、部下の行動に改善すべきことがある場合には、きちんと「叱る」ことも必要であり、業務上必要な指導を適正に行うことをためらう行為は、管理職の職務放棄にも繋がります。
業務の適正な範囲を超えた指導等は「パワハラ」になる為、本人がやる気になる様な叱り方/前向な叱り方や、叱る対象はあくまで「事柄」であり、人格攻撃に陥らない様にすることや、高圧的な印象を与えない様に(相手の目を見て)穏やかな声で問題点を簡潔に伝えることなどが「叱り方」の注意点と言えましょう。厚生労働省では、パワハラに成り得る行為類型を6つに分けていますので、以下の「①~⑥の類型」を避けて適正な教育・指導を実施することが求められます。①身体的攻撃、②精神的攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な請求(遂行不能な業務の強制など)、⑤過小な要求(程度の低い仕事/仕事自体を与えないなど)、⑥個人の侵害(私生活への介入)
Q2.うつ病の予防/ケアの為の注意点は?
下記の項目に1つでも該当する場合には、健康状態について「一声」が必要です。
該当する項目が「いくつ以下なら健康」と判断することはできませんが、複数の項目に該当する様なら、それは「うつ病」のサインかもしれません。
① 表情が暗く、乏しくなる。又は、感情が不安定になる。
② 突然の欠勤、遅刻、早退が増える。
③ 仕事の処理にこれまでよりも時間が掛かる。又は、些細なミスが増える。
④ ぐったりと疲れている様に見える。
⑤ 口数が減り、ふさぎ込みがちになる。
⑥ 食事や宴会の誘いを拒む様になる。
⑦ 仕事に対して、強い緊張感/恐怖心を示す様になる。
⑧ 身だしなみの悪さが目立つ様になる。
⑨ 強い倦怠感、頭痛、吐き気などの不調を訴える。
⑩ 疲れているのに長時間労働を止めようとしない。負荷が重くても、他者に仕事を頼まない。
⑪ 自傷・自殺について話す(話題にする)
※ 最近(おおむね2週間~1ヶ月)の状態の変化に於いて判断して下さい。
Q3.うつ病による「職場復帰」に必要な期間の目安は?
うつ病からの職場復帰を考える際に、十分な病状の回復を確認してから職場復帰させることは重要ですが、復帰後すぐに休業前の仕事を100%遂行するように求めることは、復帰する労働者に急激な環境の変化を促し「心理的プレッシャー」を与える為に適切とは言えません。但し、民間企業は
営利組織である以上、いつまでも賃金に見合わない労務提供を許容することは難しく、他の従業員に過重な負担が掛かりますし、配慮が必要以上に過度になってしまいます。この「配慮期間」については、医学書/専門書などを参照すると「臨床的回復(うつ病の症状が消退し、病気が快復に至ったと判断される状態)」から「社会的機能の回復(主観的な感情や、意欲の回復に加え、客観的にも認知機能や行動面での回復が認められる状態)」に至るまでには、2~3ヶ月のタイムラグが生じると考えられています。この社会的機能は、単に「自宅療養」をしているだけでは十分に回復せず、社会(具体的には復職)に出て様々な事象に触れることで「回復が促される」と考えられますので、やはり3ヶ月程度の配慮を行うことが妥当と考えられます。従って、この3ヶ月の一時的な職場復帰を介して「社内での配慮の範囲・程度」は小さくしていくことが、本来の意味での職場復帰につながることになります。