< 採用・試用期間などをめぐる Q&A >

 

Q1.求人票と異なる「労働条件」での採用は可能か?

 

職業安定法により、ハローワークなどに提出する労働条件は真実であることが求められす。判例の中にも「求人票の内容そのものが、契約の内容になる」としたものがあり(千代田工業事件)求人票に記載した労働条件は、当事者間で「別段の合意」をしない限り、原則的には雇用契約の内容となります。しかし、求人票に記載した労働条件は、まだ労働契約内容になっていない為、面接の過程を経て当事者が合意に達した場合には、求人票と異なる労働条件で雇用することも可能ではないかとの疑問が生じます。学説/判例の中では、求人票は不特定多数の求職者に対する「申し込みの誘因」に過ぎず、求職者が応募するのは「契約の申込み」であるとし、求人票に記載した労働条件が直ちに労働契約の内容とはならないとするものが主流を占めています。つまり、求人票に記載の労働条件は「見込み」であって、確定した労働条件とは言えないので、採用面接時に「求人票記載の労働条件と異なる労働条件」が提示されることも許されるとの考え方です。実務的には、求人票に労働条件の上限と下限に幅を持たせて記載することが一般的ですので、採用面接の際には当事者間で話し合い、合意を得た上で「労働条件を決定する」ことが原則的な対応となります.

 

Q2.経歴を偽って採用された従業員を「解雇」できるか?

 

経歴詐称は多くの企業で「就業規則上の懲戒解雇事由」となっています。これは雇用契約が継続的な信頼に基礎を置く関係であることから、採用面接の場面等で「履歴書の記載内容について使用者が合理的な範囲で説明を求めた場合は、労働者は信義則上に於いて事実を告知すべき義務があるから」です。但し、解雇が認められるのは、使用者の労働力評価についての判断を誤らさせる重要な経歴詐称に限られ、いかなる詐称についても懲戒解雇が可能であるとは言えません。詐称した経歴の内容が「事前に知っていれば、採用しなかった」との事情や、職務遂行能力の判定(採/否)に及ぼした影響が大きい場合であれば「解雇」が可能になると考えられます。学歴/職歴/犯罪歴/採用の前提条件である資格・技能等のケースでは、採否や処遇に関する問題に発展する要因となりますが、精神疾患の既往歴(うつ病等)を隠して際すようされ、後日その事実が発覚したケースでは慎重な判断が求められます。判例に於いては「秘匿された病歴が軽度のものであれば、その秘匿が直ちに解雇事由に相当するとは言い難い」として、解雇処分を無効にした判決も出ていますので精神疾患の既往歴が発覚したからと言って、直ちに「経歴詐称による解雇」の判断は控えるべきでしょう。主治医への相談(本人の同意が前提)や、担当業務の見直し/配置転換なども視野に入れて、今後の方向性を決定することが実務上の対応となります。

 

Q3.中途採用者の試用期間内での解雇は可能か?

 

試用期間は、採否決定時に「適格性の有無」を見極めることが難しいこと、その判定資料を十分に収集することもできないことから、最終決定を「留保する」との趣旨で設定されているものです。従って、試用期間中は解約権(この場合は採用するか否かの判断)が留保されていると解すことが一般的です。試用期間中の「解雇」又は「本採用拒否」は、この留保解約権に基づく解雇となりますが、試用期間中に解約権を留保した目的(本人の適正/能力の判断、教育や指導対象期間等)に照らして、客観的に合理的な理由(解雇に値する事実があるか)と、社会的な相当性(誰が見ても解雇が妥当であるか)が必要であるとされています。例えば、勤務態度が不良で「注意や指導」を重ねても改善されないのであれば、試用期間中の解雇は有効とされる余地があります。     従って、一方的な解雇通告を実施するよりは「話し合い」をした上で「自主退職(実際は退職勧奨による退職)」の方向に持っていった方が、労使トラブルの回避の観点からは望ましいことになります。しかし、初めから管理職・専門職・プロジェクトリーダーなどとして採用した従業員に関しては、採用の前提として相応の職務遂行能力が期待されている為、その能力を有していなかったと客観的に判断された場合には、解雇が有効とされる可能性は高いと考えられます。

  

 

 

   

 湊元社会保険労務士事務所

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