< 服務規律をめぐる Q&A >

 

Q1.従業員の非違行為に対して「二重処分」ができるか?

 

就業規則に基づく懲戒処分であっても、刑事事件と同様「一事不再理(同一事件について再度審理しない/二重の処罰を受けない)」の原則が適用されます。従って、「業務上横領をした従業員に自宅待機を命じ、内部調査の後に懲戒解雇を命ずるケース」などでは、最初に出勤停止処分(賃金不支給)を実施したとすると「重ねて解雇処分を行ったのは一事不再理違反/解雇自体が無効」と主張されるリスクが大きい為、この場合は自宅待機期間中は休業手当を支払い、処分確定後に懲戒解雇のみを実施することで対処できます。しかし、遅刻/無断欠勤の常習者に対して始末書を取った(譴責/懲戒処分)が態度が改まらず、更に処罰として重い「減給の制裁」を科する場合については「懲戒処分を受けたのに、改悛の見込みが無い場合」と考えることが相当です。刑法では前刑から一定期間内に再犯した場合は「再犯の刑」が最大で2倍(再犯加重)となることより、「量刑で前刑を考慮することは、一事不再理には該当しないとされています。労働契約に基づく懲戒処分

に於いても、同様の考え方で「再度の非違行為」に対する懲戒処分を重くすることはできますが、過去に懲戒処分を受けたことを理由に「新たな懲戒処分」をすることはできません。従って上記のケース(改悛の見込みが無い場合)は「新たな遅刻/無断欠勤の事実に対する処罰」であると考えれば、より重い「減給の制裁」を実施することは可能となります。

 

Q2.従業員の兼業は禁止すべきか?

 

副業/兼業(アルバイトなど)を禁止する企業が多い理由は、終業後や休日に更に労働することにより「疲労」が増大・蓄積され、本来の業務への悪影響や、作業事故の発生が懸念される為です。

しかし、従業員は就業時間中の職務専念義務は負っているものの、勤務終了後や休日の「私生活」についてまで企業の監督権が及ぶものではありません。又、他の会社で就業した時間も当日の実労働時間に入りますので、仮に出勤前に数時間の兼業をした場合には、会社で通常に勤務した場合であっても法定労働時間を超えた労働が発生することになる為、割増賃金の支払義務が発生することになります。従って、就業規則により厳格に兼業を禁止している場合とは異なり、上記の様に出勤する前の「兼業」のケースでは(従業員の申請を受けて副業/兼業を許可している場合は)時間外労働が発生することを知っていた訳ですから、会社に割増賃金の支払い義務は無いと主張することは容易ではありません。この様な点を考えると副業/兼業に関しては認めるべきでは無く、許可制

や申告制とすることも避ける方が無難であると考えられます。

 

Q3.私有車の業務使用のメリット/デメリットは?

 

私有車の業務使用は、会社にとって車両購入費用や維持費が節減でき、管理の手間も省けるなどのメリットがある反面、業務使用と私用との区別が曖昧になり易く、交通事故を起こした場合は会社の責任が問われるなどのデメリットもあります。会社が私有車の業務使用を認め、従業員が過失による交通事故を起こした場合、従業員が賠償責任を負うだけでなく、会社にも使用者責任(民法)が発生し、人身事故の場合は運行供用者責任に基づく損害賠償責任(自賠法)が生じます。使用者責任とは、従業員が業務遂行上「第三者」に加えた損害につき、使用者も損害賠償責任を負うことであり、人身事故だけで無く物損事故にも適用されます。運行供用者責任とは、会社が「加害車両

の運行支配/運行利益を有する運行供用者」に該当する場合、加害車両が起こした「人身事故」に対する賠償責任を意味します。これらのリスクを考えると、私有車の業務使用は「禁止」することが望ましいことになりますが、やむを得ない事情で業務使用させる場合には「私有車業務使用規定及び私有車の業務使用に関する契約書」を作成し、社有車に準じた管理をすることが望ましいことになります。

  

 

 

   

 湊元社会保険労務士事務所

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