< 業務災害/通勤災害をめぐる Q&A >

 

Q.労災保険に於ける「治ゆ」とは、どの様な状態か?

 

労災(業務/通勤)が発生した場合に、療養(補償)給付は「傷病が治ゆ」するまで行われますが

労災保険に於ける「治ゆ」とは、身体が完全に回復した状態を言うものでは無く、傷病状態が安定し、医学上で一般に認められた医療を行っても「医療効果が期待できなくなった状態(症状固定の状態)」を言います。従って「傷病状態が、治療により一時的な回復が見られるにすぎない場合」などで、症状が残存している場合であっても「医療的効果が期待できない」と判断される場合には労災保険法では「治ゆ(症状固定)」と判断され、療養(補償)給付を支給しないことになっています。尚、労働者が「業務上の事由」又は「通勤における負傷や疾病」による治療の為に労働することができず、そのために賃金を受けていない場合は、休業補償給付又は休業給付がその第4日目

から支給されます。休業の初日から第3日目までを「待期期間」といい、この間は「業務災害」の場合に、事業主が労働基準法の規定に基づく「休業補償(1日につき平均賃金の60%)」を支給する義務が発生します。尚、休業補償給付には、休業特別支給金(20%)が加算される為、実際には平均賃金の80%が本人に支給されることになります。

 

Q2.短期アルバイトであっても、労災給付は受けられるか?

例えば、繁忙期に「1週間の契約」でアルバイトを雇ったところ、2日目の作業中に負傷した様なケースです。労働基準法第8条により、事業に雇われる者で「賃金」を支払われる場合は、どんな就業形態で雇い入れられた者であろうと「労基法の適用を受ける労働者」となり、当然に労災事故に伴う補償を受けられます。又、1週間だけの契約であっても「労災補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることは無い(労災保険法第12条の5)」と規定されている為、被災した労働者が完治(症状が固定し、これ以上の治療が望めない状況)するまでの間、療養補償給付・休業補償給付などが支給されるみとになります。但し、有期雇用契約の為、契約期間満了後は本人が自分で申請手続を行うことになります。休業補償給付の申請に関し「平均賃金の算定」が不可欠になりますが、上記のケースでは「雇い入れ後2日目の事故」ですので、昭和45年5月14日付基発により「初日の労働に対して支払われた賃金の7分の6」が平均賃金となります。

 

Q3.通勤災害で休業した者にも「解雇軽減」はあるか?

帰宅途中で交通事故に遭い「入院中」の従業員がいるとします。普段から無断欠勤が多く、協調性に欠ける人物である為、経営者は「この事故を機に解雇したい」と考えた場合、この従業員を解雇することはできるでしょうか。労基法第19条により、労働者が「業務上負傷し、又は疾病にかかり療養の為に休業する期間、及びその後の30日間」は解雇することを法律で禁止しています。

つまり、理由の如何を問わず「業務災害による休業期間+その後の30日間」は解雇が制限されていることになります。しかし、通勤災害について「この制限」は適用されず、仮に入院中であっても解雇することは可能となります。但し、労基法上の扱いであり、解雇理由の可否判断(不当解雇など)は別の問題ですので司法による判断に委ねられます。通勤災害も、業務災害と同じ様に労災保険の給付対象となっていますが、会社の「補償責任」は課されていません。従って、通勤災害には「解雇制限の適用」は無く、一般の私傷病と同様な扱いをしても差し支えないことになります。

尚、労基法第19条による「解雇制限」として、産前産後の休業期間+その後の30日間も解雇が

禁止されていますが、雇用均等法、育児介護休業法、雇用保険法、公益通報者保護法等による解雇制限は別途存在しますので、解雇に関しては細心の注意が必要です。

  

 

 

   

 湊元社会保険労務士事務所

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